3Dプリンターを調べていると、「オープンフレーム」と「チャンバー」という言葉を目にすることがあります。どちらも3Dプリンターの構造を表す言葉ですが、単に本体の見た目が違うだけではありません。使えるフィラメントや造形中の温度環境、必要な設置スペースなどにも関係します。
では、初心者が最初の1台を選ぶなら、オープンフレームとチャンバーのどちらがよいのでしょうか。実は、チャンバー付きの高価なモデルを選べばよいとは限りません。この記事では、それぞれの構造の違いから、フィラメントや用途に応じた選び方まで解説します。
結論 3Dプリンターのオープンフレームとチャンバー構造の違い
オープンフレームとチャンバーの違いは、デザインや見栄えだけではありません。造形環境を安定させる機能を備えているかどうかにも関係し、選べるフィラメントの種類にも影響します。
初心者がPLAやPETGを中心に使うなら、オープンフレームでも十分です。将来的にABSやASAなど、温度変化の影響を受けやすいフィラメントを使うなら、チャンバー付きのプリンターを検討する価値があります。
オープンフレームは造形スペースが開放されている製品
オープンフレームは、造形スペースの周囲が開放された構造です。プリンター本体を比較的小さく設計しやすく、チャンバーを構成する部品も少ないため、価格を抑えた製品も多くあります。
造形中の様子を確認しやすく、フィラメント交換やメンテナンスもしやすいのが特徴です。PLAやPETGなど、比較的扱いやすいフィラメントを中心に使う初心者なら、オープンフレームでも十分に対応できます。
デメリットとして、造形スペースが開放されているため、外気の影響を受けやすく、温度を一定に保つことが難しくなります。また、フィラメントによっては造形時の匂いなどが周囲に広がりやすく、対応できるフィラメントが限られる場合があります。
チャンバーは造形スペースを囲う構造の製品
チャンバー構造が、おもにパッシブチャンバーとアクティブチャンバーの2タイプああります。チャンバーは、造形スペースをカバーやドアなどで囲った構造の製品です。造形中に外気が直接入りにくくなるため、造形スペースの温度を安定させやすいのが特徴です。
- パッシブチャンバー = 特別な加熱機能を搭載しないもの
- アクティブチャンバー = 専用ヒーターを内蔵するもの
パッシブチャンバーは、本体をケースで囲ったもので、専用ヒーターは搭載せず、ノズルやベッドの発熱により造作スペーツを加熱します。安価なはんめん、高い温度を維持することはできません。
アクティブチャンバーは、ケースで囲った上、専用ヒーターを内蔵する製品です。高温を維持しやすいメリットがあります。そのため、ABSやASAなど、温度変化によって反りが起こりやすいフィラメントでは、アクティブチャンバーのメリットを活かしやすくなります。
フィラメントによっては造形時の匂いや微粒子への対策が必要になることがあります。チャンバー付きの製品には、フィルターなどを使って排気を処理するものもあります。
デメリットは、カバーやドアなどの構造が必要になるため、オープンフレームより価格が高くなることが挙げられます。また、メンテナンスが面倒になる場合もあります。
記事冒頭の要約で、オープンフレームとチャンバーの基本的な違いは理解できたと思います。ここからは、フィラメントや造形物、設置スペースなどによって何が変わるのか、さらに詳しく深掘りします。
オープンフレームとチャンバー構造の特徴を深掘り
3Dプリンターには、造形部分が外部に開放された「オープンフレーム」と、ドアやカバーで囲まれた「チャンバー構造」があります。
見た目だけを比較すると単純な構造の違いに思えますが、実際には造形中の温度環境や対応するフィラメント、設置スペースなどにも関係します。
ここでは、それぞれの構造によって何が変わるのかを詳しく見ていきます。
オープンフレームは造形スペースが開放されている
オープンフレームは、造形スペースの周囲が開放された構造です。プリンター本体を比較的小さく設計しやすく、チャンバーを構成する部品も少ないため、価格を抑えた製品も多くあります。
また、造形中の様子を確認しやすく、フィラメント交換やメンテナンスもしやすいのが特徴です。
PLAやPETGなど、比較的扱いやすいフィラメントを中心に使う初心者なら、オープンフレームでも十分に対応できます。
チャンバーは造形スペースを囲う構造
チャンバーは、造形スペースをカバーやドアなどで囲った構造です。造形中に外気が直接入りにくくなるため、造形スペースの温度を安定させやすいのが特徴です。
ABSやASAなど、温度変化の影響を受けやすいフィラメントでは、アクティブチャンバーによる加熱機能のメリットを活かしやすくなります。
オープンフレームとチャンバーでフィラメント選択幅が異なる
オープンフレームとチャンバーの違いは、単に本体を囲っているかどうかだけではありません。
特にフィラメントによって必要な温度環境が異なるため、プリンターの構造が造形の安定性や素材選びに影響します。
構造の違いで使えるフィラメントの種類が変わる
PLAやPETG、TPUなどは、比較的低い温度環境でも扱いやすいため、オープンフレームのプリンターでも使いやすいフィラメントです。
ABSやASAなどは造形中の温度変化によって反りが起こりやすく、安定した温度環境が求められます。PCやPA、カーボンファイバーやガラス繊維を配合したフィラメントでは、チャンバーだけでなくノズル温度やノズル材質なども確認する必要があります。
| 素材 | オープンフレーム (加熱機能なし) |
アクティブチャンバー (加熱機能付き) |
|---|---|---|
| PLA | ◎ | ◎ |
| PETG | ◎ | ◎ |
| TPU | ◎ | ◎ |
| ABS | △ | ◎ |
| ASA | △ | ◎ |
| PC | △ | ○〜◎ |
| PA・CF/GF | △ | ○〜◎ |
※上表は構造上の適性を示したもので、プリンター個別の対応可否を示すものではありません。実際には、プリンターのノズル温度・ベッド温度・チャンバー温度、ノズルの材質などによって対応範囲が異なります。
温度変化による反りや寸法の正確さに違いが出る
3Dプリンターでは、フィラメントが冷えるときに収縮するため、素材によっては造形物の角が反ったり、ベッドから浮いたりすることがあります。
ABSやASAなどは温度変化の影響を受けやすいため、アクティブチャンバーにより造形スペースの温度を安定させることが重要です。オープンフレームは外気の影響を受けやすい一方、アクティブチャンバーを内蔵する製品は、造形スペースを囲うことで急激な温度変化を抑えやすくなります。
造形物が大きくなるほど、こうした温度変化の影響を受ける可能性もあるため、使用する素材と造形サイズの両方を考える必要があります。
オープンフレームにはベッドスリンガー方式も多い
オープンフレームの3Dプリンターには、造形ベッドそのものを前後に動かす「ベッドスリンガー方式」を採用した製品も多くあります。
構造が比較的シンプルというメリットがある一方、造形ベッドと造形物を動かすため、大きく重い造形物では慣性や振動の影響を受ける場合があります。
注釈を付け加えるのなら、ベッドスリンガーだから精度が低いというわけではありません。フレームの剛性や制御、加速度、印刷速度などによっても造形品質は変わります。
オープンフレームかチャンバーかだけでなく、プリンターの駆動方式にも注目すると、より自分の用途に合った製品を選びやすくなります。
臭いや微粒子への環境対策も考慮すべき
フィラメントによっては、造形時に匂いや微粒子などが発生することがあります。
オープンフレームでは造形スペースが開放されているため、こうしたものが周囲に広がりやすくなります。
チャンバー付きのプリンターには、フィルターなどを使って排気を処理してから排出する製品もあります。ただし、チャンバー構造だから対策が不要というわけではなく、使用するフィラメントや製品の排気・フィルター機能などを確認する必要があります。
初心者ならオープンフレームで十分?への考察
初心者だからチャンバーが必要、あるいは高価なチャンバー付きプリンターを選んだほうがよい、というわけではありません。
まずは、どのようなものを作りたいのか、どのフィラメントを使いたいのかを考えることが重要です。
フィラメントがPLA中心ならオープンフレームでも困りにくい
フィギュアや小物だけでなく、工具の整理用品や治具、カメラ用品、PC関連のパーツなど、PLAを中心に作るのであれば、オープンフレームでも十分に対応できます。
PETGを使う場合でも、対応しているプリンターを選べばオープンフレームで造形できます。
初めて3Dプリンターを購入する人にとっては、比較的扱いやすく、設置やメンテナンスもしやすいことがメリットになります。
ABS・ASAなどを使うならアクティブチャンバーが欲しい
屋外で使うパーツや耐熱性を重視するパーツなど、ABSやASAを使いたい場合は、アクティブチャンバー付きのプリンターを検討する価値があります。
ただし、チャンバー付きなら必ずABSやASAを問題なく造形できるわけではありません。加熱機能が弱いパッシブチャンバー、ノズル温度やベッド温度が低い場合は、ポテンシャルが発揮しづらくなるため、製品ごとの仕様を確認しましょう。
疑問解決:「将来使うかも」だけでチャンバーを選ぶ必要はある?
「いつかABSやASAを使うかもしれない」という理由だけで、最初からアクティブチャンバー付きのプリンターを選ぶ必要があるとは限りません。使わない機能に予算を使うより、造形サイズや必要な機能に予算を回したほうが、自分の用途に合う場合もあります。
注意点としては、購入後に使いたい素材が増え、現在のプリンターでは対応できない場合は、買い替えが必要になる可能性もあります。導入目的が構造部品の製作の場合は、加熱チャンバー付き製品の導入を検討したいところ。
- オープンフレームで良い場合:フィギュア、模型、アクセサリー、日用雑貨など
- アクティブチャンバーが有利な場合:エンジニア素材を使う、構造部品、強度が必要な場合
今作りたいものだけでなく、近いうちに作りたいものまで考えて、アクティブチャンバーの必要度を判断するとよいでしょう。
オープンフレームとチャンバーは設置スペースにも影響
オープンフレームとチャンバーの違いは、設置スペースにも関係します。
同じ造形サイズのプリンターでも、チャンバーのカバーやドアなどがあることで、本体サイズや周囲に必要なスペースが変わる場合があります。
チャンバー付きは本体だけでなく設置スペースも必要
プリンターを置く場所を考えるときは、本体の大きさだけを確認すればよいわけではありません。
チャンバー付きの場合は、ドアを開けるためのスペースや、フィラメント交換、メンテナンスのための作業スペースも必要になります。
購入前には、設置場所に本体が収まるかだけでなく、実際に使うときに必要なスペースまで確認しておきましょう。
小型プリンターならオープンフレームのメリットが大きい
小型の3Dプリンターでは、オープンフレームのコンパクトさがメリットになります。
たとえばBambu Lab A1 miniの造形サイズは180×180×180mmです。小さなパーツや治具を中心に作るのであれば、必要以上に大きなプリンターを選ばずに済みます。
重要なのは、作りたいものが180mm角を超えるのであれば、オープンフレームかチャンバーかを考える前に、必要な造形サイズを満たしているかを確認する必要があります。
オープンフレームとチャンバー、最初の1台はどちらを選ぶべき?
最初の1台を選ぶときは、オープンフレームとチャンバーのどちらが優れているかではなく、作りたいものと使いたいフィラメントから考えることが重要です。
オープンフレームが向いている人
- 3Dプリンターを初めて購入する
- PLAやPETGを中心に使う
- 小物や治具、試作品などを作りたい
- できるだけ本体価格を抑えたい
- 設置スペースを小さくしたい
- 造形中の様子を確認しやすいほうがよい
オープンフレームを選ぶ場合でも、作りたいものに必要な造形サイズとフィラメントへの対応状況は要確認。
アクティブチャンバーが向いている人
- ABSやASAなどを使いたい
- 温度変化の影響を受けやすい素材を使いたい
- より幅広いフィラメントを使う可能性がある
- 将来的に対応素材を増やしたい
- 造形スペースの温度を安定させたい
チャンバー付きのプリンターを選ぶ場合も、チャンバーの有無だけではなく、ノズル温度、ベッド温度、チャンバー温度などを要確認。
まとめ
3Dプリンターのオープンフレームとチャンバーは、単なるデザインや見た目の違いではありません。
造形スペースの温度を安定させやすいかどうか、どのようなフィラメントを使えるのか、設置にどれくらいのスペースが必要なのかなど、実際の使い勝手にも関係します。PLAやPETGを中心に小物や治具などを作るのであれば、オープンフレームでも十分対応できます。
ABSやASAなど温度変化の影響を受けやすいフィラメントを使いたい場合は、チャンバー付きのプリンターを検討したいところ。作りたいものと使いたいフィラメントを先に決め、その条件に合う構造のプリンターを選ぶことが大切です。

